
空き家の放置が進む現状、日本では固定資産税の増加や安全性の低下、不法侵入などさまざまなリスクが懸念されています。
しかし一方で、空き家をリノベーションして新たな価値を生み出す動きが注目を集めています。リノベーションは単なる修繕ではなく、現代のライフスタイルに合わせた付加価値の創出や安全性や住宅性能の向上を実現する手法です。
この記事では、空き家リノベーションの基礎知識や工事内容、費用相場、活用できる補助金制度についてわかりやすく解説します。空き家の資産価値を最大限に引き出し、安全で魅力的な住まいづくりの参考にしていただければ幸いです。

リノベーションとは、老朽化した建物の修繕に留まらず、現代のライフスタイルに合わせた内装や設備、デザインへのアップグレードを行い「建物に新たな付加価値を創出する改修工事」のことを指します。
近年、日本では空き家の放置が深刻な社会問題となっています。総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 調査の結果(令和6年9月25日)」によれば、空き家は900万2千戸に達し、2018年の848万9千戸から51万3千戸増加しています。また、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.8%となり、2018年の13.6%から0.2ポイント上昇し、過去最高となりました。
こうした背景から「空き家リノベーション」は、地域の資産価値を高めるとともに、固定資産税の増加や安全性の低下といったリスクの軽減に寄与する手段として注目されています。
国や自治体も、積極的な空き家対策を実施しており、各種補助金制度の整備を進めるなど、リノベーションを促進する環境が整いつつあります。

空き家リノベーションには、経済的なメリットや安全性の向上、環境負荷の低減といった多くの利点があります。ここでは、空き家リノベーションの主なメリットを紹介します。
誰も住んでいない実家など、所有している空き家をリノベーションする場合、既存の躯体や基礎、外壁などの構造物を活用できるため、新築や建て替えに比べて費用を抑えられる可能性があります。
今ある建材や構造物を再利用することで、解体費用や新たな基礎工事・外装工事費用などの大きなコストが削減され、全体として費用対効果の高い改修が実現できるでしょう。
長期間放置された空き家は、老朽化が進み、耐震性や断熱性など安全面でのリスクが高くなっています。
リノベーションにより、老朽化リスクを軽減し、耐震補強や断熱改修を実施することで、資産価値が向上するとともに、安心して暮らせる安全な住環境を実現できます。
既存の建物を再利用することで、新築に比べて建築資材の使用量を抑え、環境負荷の低減に貢献できるでしょう。
また、エネルギー効率の高い設備や断熱性能の向上を図ることで、省エネ効果が期待でき、持続可能な住まいづくりを推進できます。

空き家リノベーションは多くのメリットがある一方で、建物の状態によっては追加修繕費用が発生しやすいというリスクも存在します。
長期間放置された空き家では、見た目には分かりにくい内部の腐食や構造部分の劣化が進んでいるケースがあり、リノベーション開始後に予期せぬ修繕が必要となる場合があります。その結果、当初の予算を大幅に超える費用がかさんだり、工期が長引いたりすることもあるでしょう。
こうしたリスクを回避するためには、まず事前に専門の住宅診断(インスペクション)を実施し、建物全体の状態を正確に把握することが重要です。
診断結果をもとに、必要な修繕箇所を明確にし、リノベーション計画に反映させることで、追加工事のリスクを最小限に抑えることができます。
また、複数社から見積もりを取得したうえで、信頼できるリノベーション会社を選定し、工事内容や予算について十分に相談することも大切です。

空き家リノベーションに必要な費用は、物件の状態や規模、施工範囲により大きく変動します。ここでは、建物全体を改修するフルリノベーションの場合の費用目安と、特定の部位に限定した部分的なリノベーションの費用目安について解説します。
700万円〜2,500万円
フルリノベーションでは、まずは躯体部分を残し、内装を解体します。そのうえで、内装の全面改修や設備の入れ替え、耐震補強や断熱改修など、建物全体の機能性と安全性を向上させる工事を実施します。
一般的な空き家のフルリノベーションの場合、約700万円から2,500万円前後が費用相場です。
ただし、費用は家の広さや築年数、建物の劣化状況によって大きく前後します。とくに、築年数が経過した空き家では、配管や基礎部分の補修が必要になることがあり、追加費用が発生する可能性もあります。
そのため、事前の住宅診断をしっかりと行い、必要な工事内容を正確に把握することが重要です。
比較的、築年数が浅い空き家や管理状況が良好な空き家の場合、部分リノベーションで対応できるケースもあります。
部分的なリノベーションの費用は、工事を行う部位ごとに異なります。以下は各部位の一般的な費用目安です。
・キッチン: 約50万〜150万円
・浴室: 約90万〜250万円
・トイレ: 約15万〜50万円
・洗面所: 約15万〜50万円
・壁紙・天井クロスの張り替え: 約700〜1,600円/㎡
・床の張り替え: 約3万〜4万円/畳
・建具の交換: 約8万〜38万円/箇所
部分リノベーションは、特定のエリアだけを改修するため、費用を抑えられるだけではなく、工事期間が比較的短く済みます。複数箇所をまとめて実施することで、工事費用の削減も期待できるため、リノベーション会社と十分に相談しながら計画を立てましょう。

空き家リノベーションの工事期間は、改修内容や建物の状態、施工規模により大きく変動します。
たとえば、部分リノベーションの場合は、キッチンや浴室、外壁など個別の部位ごとの工事が通常1週間前後で完了することが多いでしょう。
一方、内装全体の改修や耐震補強、断熱改修など複数の工程を含むフルリノベーションでは、計画や各工程の調整を含め、全体で3〜4か月以上かかることもあります。各工程の事前準備や資材調達、施工後の検査・調整作業も工期に影響するため、余裕を持ったスケジュール管理が重要です。
空き家リノベーションを成功させるためのポイント
空き家のリノベーションを成功させるためには、いくつか抑えておくべきポイントがあります。ここからは、空き家リノベーションを検討している方が、事前にチェックしておくべき項目を紹介します。
まずは、空き家をリノベーションする目的を明確にしましょう。マイホームとして住むのが目的であれば、快適性や省エネ性能を重視した改修が必要になります。
一方、店舗や賃貸として活用する場合は、市場価値を高める安全性やデザインの改善が重要になります。
このように、リノベーションの目的に応じて、必要な工事内容や予算が変わるため、目的をしっかり定めることで、適切なプランニングがしやすくなります。
住宅診断(インスペクション)とは、専門の住宅診断士が建物の外観や構造部分を調査し、目に見えにくい劣化やリスク、トラブルの可能性を明らかにするものです。
住宅診断により、配管や基礎、断熱材の劣化など、後になってから発覚しがちな問題を事前に把握できます。さらに、診断結果をもとに必要なリノベーション工事が明確になるため、追加工事のリスクも抑えられ、資金計画の精度を高めることができます。
空き家のリノベーションは、内装の全面改修、設備の交換、耐震補強や断熱改修など、多岐にわたる専門工事が必要となるため、各工程での技術と対応力が求められます。
そのため、複数社から見積もりを取得するとともに、過去の施工事例や口コミをチェックして各社の信頼性を確認しましょう。また、アフターサポートの充実度なども比較検討し、安心して任せられるリノベーション会社を見極めることが大切です。
リノベーションは計画通りに進まない場合もあるため、予備費を含む現実的な資金計画を立てることが欠かせません。
さらに、補助金制度やローンの活用も視野に入れ、予算オーバーのリスクを回避しましょう。

空き家リノベーションは、比較的まとまった費用がかかる工事です。なるべく費用を抑えて希望のリノベーションを叶えるためには、補助金制度の活用を検討してみましょう。
空き家リノベーションで利用できる補助金は、自治体が実施しているものが中心となります。また、こうした補助金は、対象となる工事内容や条件、補助額などが、自治体ごとに異なり、年度によっても実施状況が変動します。そのため、まずはお住まいの自治体の窓口や公式HPなどで最新の情報を確認してください。
ここでは、一例として静岡県で実施されている空き家リノベーションを対象とした補助金制度を紹介します。
静岡市空き家情報バンクを利用し、売買契約が締結された住宅に対し、所定の条件を満たした場合に、補助対象経費の3分の2を補助する制度です。
「静岡市中山間地域空き家情報バンク」を通して購入又は賃貸契約した物件の改修などを行った場合、補助対象経費の3分の2以内の額(100万円を限度)を補助する制度です。
※ご紹介した補助金・助成金の情報は、2025年2月現在の内容です。最新情報については、各自治体の公式HPなどをご確認ください。
空き家リノベーションの基礎知識とメリット・デメリット、費用相場、成功のためのポイントなどをご紹介しました
放置された空き家は固定資産税の増加や安全性の低下などのリスクを抱えていますが、適切なリノベーションを行うことで、既存の建材や構造物を活かしながら、経済的にも安全性や環境面でも優れた住まいへと再生することが可能です。
また、事前の住宅診断や実績豊富な施工会社の選定、無理のない資金計画の策定が、成功への鍵となります。さらに、自治体が提供する補助金制度をうまく活用することで、リノベーション費用の負担を軽減できる点も見逃せません。
空き家リノベーションを検討中の方は、本記事で紹介した各ポイントを参考に、信頼できるリノベーション会社に相談することから始めてみましょう。
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